渡米記#002|シカゴで出くわした異世界

 

空気、匂い、行き交うひと、外の景色。すべてが十数時間前までいた東京の空港と違った。異様な世界。

1月のシカゴ、窓の外は雪が降っていた。
乗ってきた飛行機の中では押し寄せる不安と後戻りできない恐怖心を紛らわせるために友達から届いた励ましのメールを読み返してたくさんの勇気をもらった。
でもその勇気はこの異世界の前では残念ながらほぼ無力になってしまった。

 

緊張しまくり。一人で飛行機に乗るのは初めて。ましてや国際線。心なしか足が震えてないか。

 

2026年のいま思えば、空気、匂い、足の震え。これが人生の醍醐味なのかもしれない。読書や学校では得られない貴重な経験だった。

 

着いたはいいがここは誰、私はどこ状態。動揺しながらも、通り過ぎる人に声をかける。何故か動揺しながら答えてくれる。

どこの馬の骨のアジア人ともしれないやつからいきなり片言の英語で話しかえられたから、動揺していたのかもしれない。そんな優しい眼鏡の動揺おじさん曰く、おれの背後30メートルほどのところに停車している電車に乗ればいいらしい。

 

ん、電車?空港なのに電車?飛行機の乗り換えなのに電車?信じていいんだよね?メガネかけてるし、多分嘘はついてない。(偏見)。

田舎育ちの何も知らない動揺アジア人(おれ)は彼を信じて電車に飛び乗る。分かる単語、雰囲気、人、勘を頼りに居場所と行き先を必死に確認する。どうやらこの電車で大丈夫らしい。ありがとう、おっさん。

 

少し安心しながら深呼吸をする。

 

この体験を例えるなら、初めて買ったゲームソフトを他言語でプレーするのに似ている。わけの分からない村に放り出され(自分で自分を放り出したんだけど…!)、説明やヒントはあるんだけど全部読めなくて、かろうじて読める単語や場の雰囲気、勘、そして村人に話しかけまくって時間内に全クリしていく。そんな感覚に近かった。

 

心臓はバク&バク。

 

なんとかアリゾナ行きの飛行機に乗り込めた。隣に座った韓国人と思わしき青年は小慣れた感じでCAに何か注文している。「キャナイ ハバ コーク?(Can I have a coke?/コーラください。)」。なるほど、コークって言うとコーラが貰えるのか。

おれの番がきた。コークは使ったことないからやめとく。無難にウォーター。水をゲット。心臓はバクのバクのまま飛行機は時速900キロでアリゾナへ向かう。

 

つづく。