渡米記#003|あゝ、やっちまった後悔

 

無機質な白い天井がみえる。
夜中の何時なのかは覚えていない。
ホテルのベッドで仰向けになってただそれを見つめていた。

ベッド横には広げられたスーツケース。2009年当時、スマホはない。そして持参したはずのノートパソコンのアダプターがない。PCはある。電源が入らないPCはただの電子箱なのである。家族にメールも打てない。

 

思うことは一つ。「ああ、やってしまった」である。

 

アダプターがないこともそうだが、それ以上に、この留学への決断に対しての後悔。ここまで、ほぼ丸一日かかった。極度の緊張とプレッシャーで心身への疲れが思っていたより7倍くらい大きかった。

あと心細さが予想の40倍。こっちがメインである。

アメリカ留学を決断した向こう見ずで抜けた自分。そんな自分を可愛いと思ったことがないことはないが、今回はさすがに可愛くない。人生において決定的なやっちまった後悔なのである。

 

ここまで来た道のりを少し思い出してみる。アリゾナ州フェニックス・スカイハーバー国際空港についたのは夜遅く。空港からホテルへはシャトルバスだった。バスと言うよりハイエースみたいなボックス車。

 

そんなハイエースは空港の電話から呼んだのだが、愛想のない運転手は俺を見つけると1ミリも迷うことなく荷物をハイエースに積み込んでくれた。当時はなぜ呼んだのが俺だと即座に分かったのか疑問だった。

 

今(2026年)思うとフードの縁にフワフワがついたPOLOのパーカーに上質な革ジャケット、そんな服装をしたアジア人は間違いなく地元民ではない。ましてやアメリカ人ではない。とにかく”らしくない”のである。俺をみつけるのは「ウォーリーを探せ!」より遥かに簡単だったと思う。

 

運転手は一人。乗客も一人。沈黙が夜の道を快適に進んでいく。